第6回 JIA中国建築大賞2014

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アニュアルレポート

(公社)日本建築家協会中国支部
実行委員長・広島地域会長  垂井俊郎

「第6回 JIA中国建築大賞2014」は、JIAの建築家憲章の理念『建築家は自らの業務を通じて先人が築いてきた社会的・文化的な資産を継承、発展させ地球環境を守り安全で安心できる快適な生活と文化の形成に貢献します。』 に基づき中国5県に造られた作品のうち、優れた建築デザイン、建築文化や環境形成に寄与した建築作品を設計した建築家を顕彰致します。
応募建築作品は最近10年以内(2004 年1 月から2013 年12 月まで)に竣工した建築作品で一般建築部門・住宅部門の2部門とし、審査委員長は 建築家 内藤廣先生、審査員は 建築家 倉森治先生、建築家 錦織亮雄先生にお願いしました。応募は5 月1日から6 月30 日まで行い、全国の建築家から一般建築部門は15 作品、住宅部門は14 作品の合計29 作品の応募がありました。
7月中旬に一次審査・書類選考を行い、一般建築部門は9作品、住宅部門は6作品の計15作品が現地審査対象作品として絞られました。8 月4 日と6 日山陰方面、8 月5 日山陽方面の3日間にわたり、
審査員による現地審査を行い、応募者立会いのもと建築主へのヒアリングも行われ、写真だけで分からない建築の本質についても審査対象としました。中国建築大賞の重みを実感する事となりました。内藤廣 先生、倉森治 先生、錦織亮雄 先生による、厳正な審査の結果、 一般建築部門・大賞1作品、特別賞1作品、優秀賞6作品、住宅部門・大賞1作品、特別賞1作品、優秀賞3作品が選ばれました。
9 月25 日から9 月27 日にかけて開催された『JIA建築家大会2014岡山』にて入賞者発表を行い審査委員長 建築家 内藤廣 先生の講評と受賞者に表彰状と記念品が授与されました。
応募・審査期間中、多くの方々のご協力、ご支援、ご配慮をいただき、この場をお借りして皆様に感謝申し上げます。今後も「JIA中国建築大賞」が中国地方の社会的・文化的な発展を担うことを期待しております。

審査委員長 内藤 廣 (建築家・東京大学名誉教授)

毎年、審査委員である広島の錦織亮雄さんと岡山の倉森治さん、各地域の幹部の方たちとご一緒して建物を見て回ります。中国地方は広いので、現地審査はなかなか大変です。それでも道中の建築談義が面白く、また、重鎮お二人の建物評を聞くのも貴重な時間です。 今年はレベルの高い作品の応募が多い年でした。これはこの賞の価値をより多くの会員が認めてくださりつつある証です。審査員冥利に尽きます。現地審査の数も例年より多くなりました。選に漏れた作品もありましたが、意欲的に応募していただいたことに感謝したいと思います。敷地条件やコストや施主の事情など、建築はいろいろな事情を抱えて出来上がってくるものですから、時に作品として克服しがたい問題を抱えることもあります。応募された方々は、幾つかの条件がそろったときにいずれ受賞される方だと思っています。地域の建築を盛り立てていくためにも、今後とも応募のほどよろしくお願いいたします。 昨年度から受賞に値するすばらしい作品を生み出すに当たって、深いご理解をいただいた施主の方も表彰させていただくことになりました。当たり前といえば当たり前のことです。これまでそのようにしてこなかったことの方がおかしい。これからも、この賞は当たり前のことをやっていきます。加えていうと、それならば優れた作品を現実に結実させた施工者や職人も表彰すべきではないか、という声も出ました。これからの課題です。

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第6回 JIA中国建築大賞 審査結果

一般部門大賞

「出雲市庁舎」 (島根県出雲市) 設計者 川島 克也 ㈱日建設計、田中 公康 ㈱日建設計、江角彰宣 ㈱みずほ設計 「Peanuts」

■講評
コンパクトな設計とオーソドックスなディテールの積み上げが、丁寧で密度の高い硬質な空間を生んでいます。一階の市民窓口の扱い方が良かった。中規模の地方都市の市役所の在り方を示すとともに、ひとつのプロトタイプを作り出した点を高く評価したいと思います。大賞にふさわしい堂々たる作品だと思います。

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一般特別賞

カモ井加工紙第三攪拌工場史料館 (岡山県倉敷市)  設計者 武井 誠、鍋島 千恵 TNA

カモ井加工紙第三攪拌工場史料館

■講評
ハエ取り紙で有名なメーカーの工場の保存再生です。これも単なる保存ではなく、一歩踏み込んだ再生です。旧建物の二階床の開口部を使って、全く違うロジックで屋根を支える仕組みを作った想像力に脱帽です。これも、現地を訪れてみなければ分からない空間でした。隣接する跡地の広場を残しながら、新たに作られた工場のデザインも単純かつ明快で、対比的にすばらしい効果を生んでいます。保存再生の好例として特別賞としました。

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一般優秀賞

岡山県立大学同窓会館 (岡山県総社市) 設計者 岩本 弘光 岡山県立大学

岡山県立大学同窓会館

■講評
キャンパスの中庭に、強烈なフォルムのチューブが浮かんでいました。挑戦的な木造架構、それを覆うコーテン鋼の被覆。形も表現も過激ですが、現地を訪れてみてそれがちっとも不自然には感じられませんでした。これは優れたデザイン力の成せる技なのでしょう。

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一般優秀賞

山陰合同銀行旧北支店再活用改修工事 「ごうぎんカラコロ美術館」(島根県松江市)

設計者 小草 伸春 ㈱小草建築設計事務所 ごうぎんカラコロ美術館

■講評
とても丁寧に作られた改修です。構造家の今川さんによる開口部の耐震補強を巧みに生かしています。吹き抜け空間は荘重で格式高いもので、これは現代建築では作れない貴重なものです。背面のガラスのカーテンウォールは、意表をついて効果的です。この対比が良かった。

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一般優秀賞

Seto (広島県福山市) 設計者 原田 真宏、原田 麻魚 MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO

Seto

■講評
建築雑誌などで見て、なにかアバンギャルド指向で厳めしい建物だと思って敬遠していたのですが、実物は写真よりはるかに印象の良い建物でした。ちょっと驚きです。細部まで考え抜かれたディテールワークは素晴らしいものでした。

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一般優秀賞

おかやま山陽高校90周年記念同窓会館 (岡山県浅口市) 設計者 大角 雄三 大角雄三設計室

おかやま山陽高校90周年記念同窓会館

■講評
二年前に審査で訪れた建物の増築です。作者の大角さんは、すでに名人芸的な方法を確立しているのだと思います。建築のいかなる与条件も、大角さんの手にかかると大角流に消化してしまうだけの力があります。おそれいりました。ここまできたのなら、どこまで行けるのか、毒食えば皿まで、もう一歩踏み込んでみてはどうでしょうか。その世界が見てみたい。

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一般優秀賞

二つのクリニック (山口県宇部市) 設計者 永見 龍一 永見龍一建築計画事務所

二つのクリニック

■講評
ちょっと疲れた感じがする市街地に、突然白いキューブが現れます。この気分はよくわかります。たぶんこれ以外の回答はないでしょう。数年前に完成した一期目の建物と、新しく完成した二期目の建物を合わせた応募です。おどろくのは、これだけ外部も内部も白くした建物なのに、この手の建物に付き物の外部の汚垂れがほとんどなく、内部の汚れもほとんど目立たないことです。これは周到な設計と建て主の気配りによる成果だと思います。

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一般優秀賞

KDC(小さな森の歯科診療所) (広島県福山市) 設計者 加藤 詞史 (株)加藤建築設計事務所

小さな森の歯科診療所

■講評
先進的な診療システムを実践する傍ら、施設自体も地域のコミュニティセンターのようなものにしたい、という取り組みをされている建て主に脱帽。設計者もその希望をなんとか建築の形や細部のデザインにまとめようと一生懸命に腐心した痕跡が散見される建物です。

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住宅大賞

木立ちの家 (広島県福山市) 設計者 後藤 亜貴 後藤亜貴建築設計事務所

木立ちの家

■講評
実物を拝見して、写真では分からない外部から内部に至る空間のつながり方や構成に感心しました。フラットな敷地の扱い方や単純化された建物配置に特徴があるのですが、それが少しも不自然ではないところに、設計者の技量の高さを感じました。経験から培われたディテールや素材の扱い方も丁寧で、大賞にふさわしい好例だと思いました。

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住宅特別賞

後山山荘 (広島県福山市) 設計者 前田 圭介 UID

後山山荘

■講評
聴竹居で知られる藤井厚二が故郷に建てた兄の別荘ですが、廃墟同然で手に入れられた施主が、主要部分の復元と再利用を設計者に託して出来上がった建物です。建物自体に歴史的な意味があり、再生するには大変な苦労があったと思います。しかし、単なる保存再生ではありません。旧建物に敬意を払いながら、各所に設計者のアイデアが盛り込まれており、この姿勢に審査委員各位から高い評価を得て特別賞としました。

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住宅優秀賞

Indoor terrace の家 (島根県出雲市)設計者 原 浩二 原浩二建築設計事務所

Indoor terrace の家

■講評
シンプルな家型なのに、不思議な仕掛けがしてある建物でした。この不思議さが、建て主のライフスタイルを巧みに支えています。仕上げや細部のディテールワークもうまくいっています。作者はたびたびこの賞に応募してくれていますが、作品を重ねるごとに無理がなくなってきている印象です

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住宅優秀賞

寄島の家 (岡山県浅口市)設計者 今川 忠男 今川建築設計

寄島の家

■講評
あまり特色のない小さな漁村集落の小道を入ったところに、さりげなく建物が建っています。一見地味な改修ですが、もとの平面と比較すると、平面の再構成に対する切り込み方は大胆です。玄関から小さな土間を経ていきなりダイニングになっているのには驚きました。それが古民家改修とじつにうまくマッチングしています。新しい空間を見せてもらった気がします。庭先にも少し気を配るとさらに素晴らしいものになると思いました。

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住宅優秀賞

早島の家(岡山県都窪郡早島町)設計者 稲垣 年彦、大賀 環子 トリムデザイン

早島の家

■講評
小さな住宅ですが、全面道路との関係の作り方や、光と風を取り込むファサードの作り方は見事なものです。小住宅のひとつのプロトタイプになっていくかもしれません。表のファサードの壁をスリムに見せるようにしているなど、細部に対する気遣いがうまく生きています。

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