第3回JIA中国建築大賞2011 審査結果レポート

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役員会議事録

アニュアルレポート

 

審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

 3月以降東北に行く機会が増えたが、中国建築賞の審査で中国地方をまわると、つくづく平穏な
日常がいかに有り難いものかを痛感する。さまざまな問題が山積しているにせよ、先人が作り上げたこの国の山野田畑の美しさは世界に誇れるものだ。だだし、建築さえなければ、と付け加えざるを得ない所が悲しいところだ。だからこそ、研鑽の場としてのこの賞の意義があるのだろう。
わずか15年前に神戸を襲った災害の衝撃も人々の意識から遠くなりつつある。人は今日や明日を生きていかねばならない。あってはならないことだが、非日常の風景を意識の外に置かなければ、生きていけないのも悲しい事実だ。見方を変えれば、それが人間のたくましさだと言うことも出来る。そんな感慨を持ちながらの審査である。毎年、審査委員である広島の錦織さんと岡山の倉森さんとご一緒できるのを楽しみにしている。広島も岡山も戦争で廃塵に帰した街だ。その原風景からどのように建築家としての人生を歩まれたのか。建物を前にして発せられる言葉の重みに、教えていただくことが多い。
今年も優れた作品がたくさん寄せられたが、委員の先生方と協議して一般建築部門では大賞を出さないことにした。言うまでもなく、大賞はこの地方の建築家にとってベンチマークになる作品でなければならない。その意味で、建築家ばかりでなく多くの一般の方からも賛同を得られるような幅の広さと品格を備えていなければならない。日本建築学会賞の作品賞でさえ、「該当作無し」の年が3回もあった。その気概を示すことで、以後の作品のレベルが上がったことを思えば、前記の条件に照らして、得心の行く作品がなければ、あえて大賞を出さないことも委員長としての責任ではないかと考えた。優秀賞は、それぞれ優れた特質を備えた作品である。

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第4回 JIA中国建築大賞 審査結果


一般部門大賞

該当なし

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一般優秀賞

府中市立府中小学校・府中中学校”府中学園”(広島県)
設計者 福田卓志 小泉治 藤田雅義 (株)日本設計

府中市立府中小学校・府中中学校

■講評
「府中市立府中中小学校・府中中学校”府中学園”」は、小中一貫教育の先進的な試みを平面の構成でどのように解くかに力点が置かれていた。公立の小中学校もここまで来たか、と思わせるに足る新しい試みだった。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

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一般優秀賞

せんだ保育所(広島県) 設計者 今川忠男 今川建築設計

せんだ保育所

■講評
「せんだ保育園」は、大断面集成材を使った木造二階建ての保育園として先駆的な取り組みだ。その取り組みもさることながら、生み出された空間の伸びやかさが印象的だった。
建築家の温かな人柄がにじみ出たような微笑ましい建物だった。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

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一般優秀賞

犬島「家プロジェクト」(岡山県) 設計者 妹島和世 妹島和世建築設計事務所

犬島「家プロジェクト

■講評
「犬島「家プロジェクト」」は、いまや世界的な建築家になりつつある妹島さんの現在進行形のプロジェクトだ。ひとつひとつのパビリオンが強い個性とメッセージを持っている。アートと建築によって過疎の村がどのように変容していくのか、今後その物語りが完結した時が本当の評価を得る時だろう。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

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一般優秀賞

松江歴史館(島根県) 設計者 矢田和弘 (有)環境計画建築研究所

松江歴史館

■講評
「「松江歴史館」は、敷地が松江城の堀に面していることから、歴史的な街並を強く意識して建てられた建物だ。機能から要求されるボリュームや配置を満たしながら、同時に周辺景観にも配慮するとすれば、おそらくこれが唯一の答えの出し方だろう。完成に至る熱意に敬意を表したい。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

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一般優秀賞

松園(増改築)(島根県) 設計者 江角俊則 一級建築士事務所江角アトリエ

松園(増改築)

■講評
「松園(増改築)」 は、昨年度の住宅部門の大賞に輝いた江角俊則さんの作品。小品だが、素材の扱いやディテールにこだわり抜く姿勢は貫かれている。どのような種類の建物を依頼されても、自分の作風の手中に収めてしまう手腕に脱帽する。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

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住宅大賞

森のすみか/nest(広島県) 設計者  前田圭介 UID

ナカニワニワハウス

■講評
今年の住宅部門の大賞は、文句なく前田圭介さんの「森のすみか/nest」。書類審査では、少し過激に行き過ぎているのではないか、その思い切りのよさが住む上での不自由さに繋がっているのではないか、という印象を持ったのだが、実際に行ってみると、それはまったくの杞憂だった。実に鮮やかに、それも清々しく、それらの問題をクリアーしていた。それどころか、大胆な構想が新しい住空間の在り方を生み出しているとさえ思えた。昨年度の江角さんの作品もそうだが、こんなに優れた作品が、建築雑誌の誌面に掲載されないなんて信じられない思いがした。われわれ審査委員がおかしいのだろうか。いや、だからこそこの賞が必要なのだという思いを新たにした。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

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住宅優秀賞

西粟倉の木の家 モデルハウス2号 (岡山県)
設計者  長谷川知子 1級建築士事務所ハセガワデザイン
三木志緒里 三木設計室
下山聡 下山設計室

西粟倉の木の家

■講評
選考委員と事務局の了承を得て、【西粟倉の木の家 モデルハウス2号】を奨励賞とした。主体が村で、木材振興を主眼に建てたモデルハウス。これは特定個人を対象とした住宅とは言い切れないし、さりとて不特定多数を対象とした一般部門とも言い切れない。しかし、村づくりや木材振興に対する取り組み自体は、建築にたずさわる者のひとりとして評価したいし、作品もその意を受けて丁寧な仕上がりだ。以上のような理由で、今年は特別に奨励賞を設けていただき評価することとした。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

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