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第7回JIA中国建築大賞2015
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審査結果レポート
(公社)日本建築家協会中国支部 実行委員長・山口地域会長 田中輝幸
JIA中国支部では、JIAの建築家憲章の理念『建築家は自らの業務を通じて先人が築いてきた社会的・文化的な資産を継承、発展させ地球環境を守り安全で安心できる快適な生活と文化の形成に貢献します。』 に基づき中国5県に造られた作品のうち、優れた建築デザイン、建築文化や環境形成に寄与した建築作品を設計した建築家を顕彰いたします。今回は第7回となり、「第7回 JIA中国建築大賞2015」を一般に公募しました。 応募建築作品は最近10年以内(2005 年1 月から2014 年12 月まで)に竣工した建築作品で一般建築部門・住宅部門の2部門とし、審査委員長は 建築家 内藤廣先生、審査員は 建築家 倉森治先生、建築家 錦織亮雄先生、建築家 前田圭介先生にお願いしました。応募は7 月1日から8 月31 日まで行い、全国の建築家から一般建築部門は16 作品、住宅部門は9 作品の合計25 作品の応募がありました。
9 月7 日に厳正な書類審査により一次審査通過作品が決定し、一般建築部門は5作品、住宅部門は3作品の計8作品が現地審査対象作品として絞られました。9 月29 日と30 日の2日間に渡り、審査員による現地審査を行い、応募者立会いのもと建築主へのヒアリングも行われ、写真だけでは分からない建築の本質についても審査対象としました。中国建築大賞の重みを実感する事となりました。内藤廣 先生、倉森治 先生、錦織亮雄 先生、前田圭介 先生による、厳正かつ慎重な選考の結果、 一般建築部門は大賞1作品、特別賞1作品、優秀賞3作品が、住宅部門の大賞は審査員の方々が熟慮された結果、今回は「該当なし」となり、優秀賞3作品が選ばれました。
11 月20 日から11 月21 日にかけて開催された「JIA中国支部建築家大会IN広島2015」にて入賞者発表と表彰式を行い、審査委員長 内藤廣先生、審査員 倉森治先生、錦織亮雄先生の審査講評と受賞者による作品紹介を行いました。また、受賞作品のクライアントに対して記念品を贈呈し、建築への理解と協力に感謝の意を表しました。 応募・審査期間中、多くの方々のご協力、ご支援、ご配慮をいただき、この場をお借りして皆様に感謝申し上げます。今後も「JIA中国建築大賞」が中国地方の社会的・文化的な発展を担うことを期待しています。
総評
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)
この賞も7回目になります。年月が過ぎていくのは早いものです。この間、いろいろなことがありました。東日本大震災の津波と原発、新国立競技場問題、とかく東の方は騒がしい。そんなことを傍目で見ながら、中国地方の津々浦々で良い建築を作ろうと粛々と研鑽を重ねている建築家たちに敬意を表したい。時代の大きなうねりはそちらの方で動いていくのかも知れません。 この賞は中国地方以外の会員にも開かれていますから、この地方に建ちさえすれば応募が可能です。これには賛否があると思いますが、外の刺激を排除するようでは考えが狭くなります。東京の建築家が設計する都会の風を刺激材料にして、地元の建築家たちも負けずに切磋琢磨して欲しいと思います。都会の建築家も、何故か中国地方に建てるとなると、作風に微妙な違いが出てきます。ややゆっくりと、ややのびのびと、作品が纏う空気が違ってきます。それが面白いところです。この地方の風土がそうさせるのだと思います。
総評を書かねばならないのですが、ハタと気がつくと書くべき内容が思い浮かびません。審査を通して教えてもらっているのはこちらの方です。作品に接するたびに、反省しきり、です。とくにここ数年、この賞を巡る中国地方の建築作品のレベルは明らかに高くなってきています。それを肌で感じています。素晴らしいことです。地場の力を味方に付けた作品には、都会の浮かれたデザインを含み笑いで蹴倒すような勢いがあります。このままずっと建築文化が根付いていくことを願っています。
第7回 JIA中国建築大賞 審査結果
一般建築部門|大賞
ONOMICHI U2 (広島県)設計者 谷尻 誠 (SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.) 、吉田 愛 (SUPPOSE DESIGN OFFICE Co.)
■講評
港湾地域の倉庫の改修が見事な地域再生の拠点になっています。この場所を通して尾道に新しい風が吹き込んできているのが感じられました。これは企画と運営の見事さですが、建築空間もよくそれをサポートしています。隅々までデザインされていますが、さりげなく気が使われているのがよい。企画、運営、それを空間化した設計、これらを合わせて審査委員から高い評価を得ました。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)
一般建築部門|特別賞
島根県立図書館駐輪場 (島根県) 設計者 山本 大輔(島根県庁)
■講評
本省も含め戦後永らく官庁営繕は、発注業務を主務として自ら手を動かすことがありませんでした。本応募作品は県の営繕自らが手を動かし設計した全国的にも稀に見る試みです。小規模ですが、RC壁の繊細さ、その頂部の鉄骨の納まりなど、細部に至るまでディテールが練り上げられており、そうしたこだわりが繊細な表現を可能にしています。その結果、ただ者でない駐輪場が出現しました。こうした試みは、官側の建築に対する理解を確実に深めていくはずです。官と民の相互理解こそが、真に地域にふさわしい建物を可能にします。その期待を込めて特別賞としました。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)
一般建築部門|優秀賞
はあと保育園(山口県) 設計者 大野 秀敏(アルプスデザインワークショップ)、江口 英樹(アルプスデザインワークショップ)
■講評
再編されつつある市街地の中にあって、こどもに対する愛に溢れた建物です。理詰めの大野さんの作品としては、特異な部類に属するかも知れません。エキスパンドメタルやワイヤーメッシュを駆使して、緑の薄いベールをまとったような半外部空間は魅力的で、これから時を刻むごとに豊かになっていくことが想像できました。森のようになった十年後のこの建物を見てみたい、と思いました。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)
一般建築部門|優秀賞
BWT あすとぴあ工場(山口県) 設計者 小嶋 一浩(シーラカンスアンドアソシエイツ)、赤松 佳珠子(シーラカンスアンドアソシエイツ)
■講評
外部に大きく張り出した庇を除いて、潔いほど無駄なものがない。それでいて醸し出される空間の緊張感が素晴らしかった。これは細部にわたるまでパーツをおろそかにしなかったが故に可能になったことだと思います。限界まで切り詰めた構造、設備や建具も既製品を使いながら、すべてが考え尽くされていることがよく分かりました。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)
一般建築部門|優秀賞
ひがし町(岡山県) 設計者 大角 雄三(大角雄三設計室)
■講評
これまで何度もこの賞を受賞された大角さんの作風は、もはやこの地域のスタンダードになりつつあります。受賞されるレベルにあることは当然としても、審査する側からは新たな挑戦を見てみたい、という気持ちもあります。<黒谷の家>の、不器用で、それでいて自由で、アナーキーでアバンギャルドな作風が懐かしい。新たな挑戦を楽しみにしています。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)
住宅部門|大賞
該当作品なし
住宅部門|優秀賞
上山の家 (岡山県) 設計者 神家 昭雄(神家昭雄建築研究室)
■講評
住宅作品としては文句のつけようがありません。とても素晴らしいレベルの住宅作品だと思います。大賞としなかったのは応募者が神家さんだからです。作品ごとに完成度が高まっているのを感じます。この延長で作っていけば、作品のレベルを安定させることは出来るでしょう。作風を確立した建築家が誰しも迷うように、問題はこれから先です。それでも創造的であり続けられるだろうか、ということです。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)
住宅部門|優秀賞
軒家/NOKIYA 設計者 濱田 昌範(濱田昌範建築設計事務所)
■講評
シンプルで力強い構成、その潔さに感服しました。完成度の高い作品です。開口部をたくみに設けているので建物の幅の狭さが気になりません。やっぱり建物は、とくに住宅作品は実物を見なければ分かりませんね。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)
住宅部門|優秀賞
凹みの家 (島根県) 設計者 原 浩二(原浩二建築設計事務所)
■講評
原さんもこの賞の常連の一人です。最初に見せていただいた住宅から比べると、ずいぶん熟れた作風になってきていますね。楽な感じの今の方が個人的には好きです。ただいろいろなことを自由に扱えるようになった分、凹みなんていうようなアイデアに建物すべてを託してしまうことが良いのかどうか。気になります。どこかで、原さんの面白くなくてすごい空間というのを見てみたい。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)