JIA中国支部では、JIAの建築家憲章の理念にもとづき、中国5県に造られた建築を顕彰する目的
で、JIA中国建築大賞を創設した。本賞は、中国地方のすぐれた建築デザインや建築文化や環境形
成に寄与した建築作品を設計した建築家を顕彰する目的で、「第2回JIA中国建築大賞2010」を開催し
た。
応募建築作品は最近10年内に竣工した一般建築部門・住宅部門の2部門とし、審査委員長には
建築家 内藤廣先生、審査員には倉森 治氏、 錦織 亮雄氏にお願いしました。全国の建築
家から一般建築部門は16作品、住宅部門は15作品の応募があり、1次審査に一般建築部門は2作
品、住宅部門は4作品選ばれた。その後9月23日に山陽、9月24日に山陰にて審査員による現地審査
を行い、一般建築部門 建築大賞1作品、優秀賞1作品、住宅部門 住宅大賞1作品、優秀賞3作品
が選ばれた。
11月12日、13日に開催されたJIA中国支部建築家大会IN倉敷2010にて入賞発表を行い、審査委員長
内藤廣先生の講評と大賞受賞者による作品説明を行いました。表彰式は2011年4月の中国支部総
会にて執り行なう予定です。
本賞は今年で二回目になります。秋になると、中国地方を駆けめぐり、審査対象の建物を見せ
ていただくツアーが恒例になってきました。建築家の思いのこもった建物を見て歩くことは、わ
たし自身とても勉強になります。
今年建築部門で現地審査に残ったのは対照的な二つの建物でしたが、どちらもとても素晴らし
い建物でした。
毎回思うのですが、この賞の目的は、地域や地域の建築家達を励ますものであってほしいと思
います。一方で、開かれたものでもあってほしいと思っています。仲間内の褒め合いや独りよがり
では、やがて賞は力を失ってしまうからです。良い建物を曇りのない目で顕彰し励みとする。そ
れこそがこの賞の全国に向けたメッセージであり、それがこの賞ならではの品格を生み出すもの
と信じています。
■講評
「津山洋学資料館」は、旧街道筋の伝統的な町並みの中に控えめに建っています。建物は、この地出身の幕末の蘭学者箕作阮甫、保存されているその旧宅の隣に建てられています。五角形が連なる平面構成が特徴的ですが、現地を訪れてみると意外なほど控えめで、この形がかえって街に溶け込んでいることがわかります。この建物の個性は、設計者が加えた幕末から明治を想起させるような装飾的な部分によって醸し出されています。それが単なる作品的な自己顕示になっていないところが素晴らしいと思いました。街並みと時代、伝統と洋学、そうした本来混ざり合わないものを、サラリと巧みに処理している、その技量に感じ入りました。建築部門の大賞にふさわしい作品だと思います。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)
■講評
「Slow House」は、一目見て気に入りました。実にチャーミングな建物です。生活者と建築家が、深いところで理解し合わないとこういう建物は出来ないでしょう。まさに、都会では不可能に近い住宅の在り方を見せてもらった気がします。庭の奥に広がる畑の稲穂は黄金色に色づいていましたが、建物はそれとまったく一体化しているようでした。居間は、主のライフスタイルそのままで、Slow Lifeがそのまま住宅になったような生活感あふれる「Slow House」でした。書斎、和室、洗面、そして薪を焚く風呂、そうした裏の空間も、考え抜かれた設計です。一番の特徴は、緑化された屋根ですが、煙突のデザイン、軒の面度板のデザイン、細部にまでこだわっているのが印象的でした。まさにこれぞ、という気持ちで大賞にしました。
審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)