第5回JIA中国建築大賞2012
審査結果レポート

アニュアルレポート

審査結果レポート

審査委員長 内藤廣
今年も優れた作品が多数寄せられました。当選するのは一握りです。多くの方が、精魂込めて作り上げたものを、勇気をもって応募して下さいました。にもかかわらず、選に漏れた方は落胆されることと思います。しかし、これはこの審査委員で選べばこうなる、という結果です。みんなで競い合い、全体のレベルが向上していくことが目的ですから、来年もさらなる応募をいただき、この地域主体の企画をさらに盛り上げていただくことをお願いいたします。やがて、全国の目が中国地方に注がれることになる日が来ると思っています。

総評

審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)
 JIA中国建築大賞も4回目を迎え、関係者のたいへんな努力もあって、しだいに意義ある大きな賞へと育ちつつあります。毎年、現地審査で回るのですが、中国地方の広さを実感するとともに、地域によって異なる建築文化が生み出されつつあることを感じます。地域ごとに会員同士が切磋琢磨している成果が現れ始めているのではないでしょうか。地域主権が叫ばれるこの国のこれからの文化を考える上で、これはとても大きなことです。JIA中国建築大賞は、この流れを進め励ますものでありたいと思っています。

今年、幾つも作品を見るうちに、建築家の能力を引き出し、存分に仕事をさせる施主の理解が、作品にとって大きな役割を果たしていることに気付きました。近年の作品で優れたものは、例外なく作品の裏に施主の温かな眼差しがあることを感じました。この賞に於いては、特にこの傾向が他地域より強いと思います。これも大きな地域特性です。そこで、審査委員と事務局で話し合った結果、今年から建築家と共に建築主にも記念品を贈ることにしました。この賞におおきな特徴が加わることになります。

第5回 JIA中国建築大賞 審査結果

一般建築部門|大賞

「認定こども園 さざなみの森」 設計者 竹原義二
■講評

一般建築部門の大賞になった「認定こども園 さざなみの森」は、独特のヒューマンなスケール感、ディテールの完成度、共にそろった秀作でした。さすが竹原義二さん。心地よい空間体験をさせていただきました。独創的でありながら温かい。この微妙な感じは、やはり手描きの図面ならではなのかもしれません。せるに足る新しい試みだった。

審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

一般建築部門|優秀賞

おかやま山陽高校記念館 大角 雄三
■講評

大角雄三さんの「おかやま山陽高校記念館」も密度のある作品でした。ひとつひとつのディテールは、大角さんが永年住宅作品で作り上げてきたものです。それが大きな建物に巧みに組み合わされているのを感じました。

審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

一般建築部門|優秀賞

潜水士のためのグラス・ハウス 中薗 哲也  名和 研二
■講評

中薗哲也さん名和研二さんの「潜水士のためのグラス・ハウス」は、土木用材を積み上げた独特のマッシブな構造体と、その間に架け渡された繊細な構造体の対比が面白かった。過激そうに見えて、細かなところまでフォローアップされていたところに好感を持ちました。
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審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

一般建築部門|優秀賞

雲南市立三刀屋中学校校舎改築工事 小草 伸春
■講評

小草伸春さんの「雲南市立三刀屋中学校校舎改築工事」は、大規模な増築ですが、のびのびとした心地よい空間を実現していました。構造計画の秀逸さも大きく貢献していると思いますが、それをことさら感じさせないところに設計の妙を感じました。

審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

住宅部門|大賞

ナカニワニワハウス 来間 直樹
■講評

住宅部門の大賞となった来間直樹さんの「ナカニワニワハウス」は、スケール感といい、そつのないディテールのさばきかたといい、文句なく高いレベルの設計であることを感じました。奇をてらうのではなく、あたりまえのことを丁寧に組み上げていく態度に共感を覚えました。

審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

住宅部門|優秀賞

光舞台の家 設計者 小川 文象
■講評

小川文象さんの「光舞台の家」は、若々しくアイデアに富んだ作品でした。不思議な形をした平面形ですが、大きなアイデアを生かすために細部を犠牲にしていないところがよかった。一発芸に走らないところは、なかなかなものです。

審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)

住宅部門|特別賞

谷万成の家 設計者 神家 昭雄
■講評

神家昭雄さんの「谷万成の家」は、素晴らしくウィットに富んだ軽妙な作品でした。ただの温室の改築なのに、アイデアとこだわりが素晴らしい。ひと目でこの作品が好きになりました。すでに3年前に大賞を受賞されているので、審査委員で話し合って特別賞としました。

審査委員長 内藤廣(建築家・東京大学名誉教授)